【阿波の神社を行く!】夷(えびす)さんの生まれた地 延喜式内社「生夷神社」(勝浦郡勝浦町)

阿波の神社を行く!
927年の延喜式神名帳に、阿波国勝浦郡の小社として、事代主神社が記されています。その比定社が、徳島県勝浦郡勝浦町沼江字田中71にある生夷神社(いくいじんじゃ)です。生夷は、夷が生まれると書きます。このことから、この地で、夷が生まれたという興味深い話もあります。
ちゃぼたつ
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夷さんがこの地で生まれたとは・・・。生夷神社は、事代主神を祀っているので、事代主神が生まれた地ということになります。

生夷神社を訪ねてみた!


小集落の小さな神社といった感じですが、境内はきれいに掃除されています。地元の人に大切にされているのがわかります。拝殿に、阿波古事記研究会の案内書きがあり、「えびすさんの生まれた勝浦町」として、「生夷荘は、夷生まれし地なり」という町史の記載を記しています。

夷(えびす)は事代主神なのか?

それにしても、夷(えびす)がなぜ事代主神なのでしょう。

夷とは、そもそも遠方の異民族を意味する言葉です。有名な「魏志倭人伝」は「魏書」という中国の歴史書の「東夷伝倭人条」に記されており、当時の中国は、倭国を東の遠方の「東夷」とみていました。また、大和朝廷は、帰順していない東国の人々を蝦夷(えぞ)と呼んでいました。文字から推察すると、夷神は「遠方からやってきた神」ということになります。

夷神は、古くから漁業の神として信仰されていたようで、七福神のえびす神は釣竿と鯛を持っていることも、海を越えて遠方からやってきた神の性格をあらわしています。余談ですが、七福神のなかでは、唯一、えびす神だけが日本古来の神だそうです。

夷神は、蛭子神(ひるこのかみ)という説もあります。蛭子は、伊弉諾命と伊弉冉命の子ですが、生まれてすぐに海に流されてしまいます。蛭子が成長して海から帰ってくるという信仰が、海からやってくる神である夷神の姿と重なって「夷神=蛭子神」となったというものです。

夷神を事代主神と同一だとする説は、国譲りの時に、事代主命が釣りをしていたことで、海の神と結びついたのではという説がWikにありました。

ちゃぼたつ
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「夷神=蛭子神」の説は、なんとなく納得できますが、「夷神=事代主神」の説は、さすがに無理があるのではと思ってしまいます。それなら、それなら、海から突然現れて大国主命とともに国作りをしたと古事記に記されている少名毘古那神のほうが、夷神にふさわしいような気がします。

延喜式神名帳にいう勝浦郡事代主神社が生夷神社であるということを前提にすれば、事代主神社が生夷神社と改称したことになります。理由は、事代主神と夷神を同一視したことによると考えられます。しかし、夷神=事代主神でないとすれば、生夷神社が、本当に延喜式内社の事代主神社なのかという疑問も出てきます。

生夷の地名から考えてみた!

勝浦町はかつて生夷荘と呼ばれていました。生夷という地名がどのようにして付けられたかは定かではありません。しかし、生夷の意から、遠くからやってきた異民族が開拓した土地とも考えられないこともありません。

遠くからやってきた異民族が開拓した地が生夷と呼ばれるようになり、その異民族が祀っていたのが事代主神という妄想をすれば辻褄が合います。

そういえば、景行天皇紀に「日本武尊命が東国から連れ帰った蝦夷を三輪山から播磨・讃岐・伊予・安芸・阿波に送った。」という記述があります。まさに、夷が阿波にやってきていたのです。

ちゃぼたつ
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しかし、これでは事代主神との関係が説明できません。では、こんな妄想はどうでしょう。

兵庫県神戸市長田区にある長田神社では事代主神を祀っています。神功皇后が新羅から難波に戻る途中で船が動かなくなり、占ったところ、事代主神が現れ、「吾を長田国に祀れ」と神託を受けたことが創始とされています。生夷神社のあるところは、往古は長国と呼ばれ、その祖は大国主命であるとされています。

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ちゃぼたつ
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長田国と長国・・・もしかして・・・。これはちょっとこじつけが過ぎました。

まとめ

生夷神社(いくいじんじゃ)は、夷(えびす)が生まれた地とされていますが、確かな証拠は見つけられませんでした。「生夷荘は、夷生まれし地なり」と記した町史の根拠が知りたいものです。しかし、地名を冠する神社ですから、古くからこの地に鎮座する神様として地域の人々の信仰を受けてきたのでしょう。

ちゃぼたつ
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今回、資料がなくて、Wikipediaでかたっぱしから調べました。いろいろな説があり、うまくまとめることができませんでした。あしからず・・・。

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